会社生活を駆け抜け(た)日々

55歳でひとまず会社生活に区切りを付けたその後の日々

安部公房「題未定」短編集

今年生誕100年を記念して、新潮社より安部公房の文庫本がなんと30年ぶりに発売されました。


ひとつは未完の長編「飛ぶ男」、もうひとつは初期短編集の「題未定」です。


(霊媒の話より)題未定―安部公房初期短編集―(新潮文庫)
(霊媒の話より)題未定―安部公房初期短編集―(新潮文庫)
新潮社
Digital Ebook Purchas


「飛ぶ男」の方は単行本で持っているので、こちらの「題未定(霊媒の話より)」を購入しました。


表題作の方を読みましたが、いやはや流石ですね。文章がまず当時のものとは思えないぐらいスラスラと入って来ます。また内容も、社会からはぐれた者の葛藤、即ち社会の普遍的なテーマを扱っているのでまったく色褪せていないです。


私自身がいま、社会から疎外されたような感じになっているので、主人公の心象風景や葛藤が、手に取るように伝わって来ました。手前ミソですが、社会からはみ出した人間、零れ落ちた人間から、物語というものは始まるんじゃないか、そんな気もしました。


私自身、会社組織というものに辛うじてぶら下がって来ましたが、2年前にそこから離脱しました。いつも組織と個人という間の境界線上で揺れ動いていた気がします。


そういった人間の心情を、文学というもので表現してくれる作家の存在というのは本当に貴重だと思います。

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