会社生活を駆け抜け(た)日々

55歳でひとまず会社生活に区切りを付けたその後の日々

箱男

来年は、安部公房が誕生して100年になるのだそうです。



知らなかったのですが、それに併せて映画「箱男」が公開されるそうです。主演は永瀬正敏。共演として、浅野忠信、佐藤浩市という「濃い目」の布陣。


正直いって、あの小説『箱男』を完全再現するというのは無理な話しだと思います。あくまでもそのエッセンスのようなものを再現するんだと思います。それだけでも充分に作品として成立する筈ですから。


小説の方は、高校くらいのときに読んだのですが、確かに新しいと思いましたが、自分にはわかりませんでした。頭からダンボールを被って社会との関わりを拒んだ男、というテーマは興味深かったのですが、その内容が目まぐるしく変転し、とても付いて行けるものではありませんでした。


後から読んだノートによると、この小説は、世界で初めて『書く』という行為を追求した作品なんだそうです。つまり、ある男が箱男になって、その赤裸々な暮らしぶりを克明に記録したというものではなく(その方が圧倒的に面白いと思うのですが)、文学上の実験のようなものを試みた、ということらしいんですね。だから書き手が目まぐるしく変遷し、殆ど観念小説のようになっています。これを高校時代の自分がわかるかというと、ムリだったんじゃないかと思います。本当に、安部公房という作家は、悪評を恐れない勇気のある作家だったということですね。


来年の映画公開を、小説『箱男』を再度読み通しながら、待ち侘びたいと思います。

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