会社生活を駆け抜け(た)日々

55歳でひとまず会社生活に区切りを付けたその後の日々

最近読んだ本

図書館で借りていた本を、痛風の安静時に読むことが出来ました。


街とその不確かな壁
街とその不確かな壁
新潮社
Digital Ebook Purchas


まずは村上春樹さんの最新作、『街とその不確かな壁』です。


相変わらずのムラカミワールドで、1200ページという大長編ですが、スラスラと読み進めて行くことが出来ました。このあたりは流石だと思います。


日本文学には、難解で読み進めて行くのもひと苦労という作品が多いですが、幾ら内容的に優れていても、人が手に取ってくれなければその内容は伝わりません。自分の凝り固まったスタンスを、人に見て貰いたいと思うのなら、人に手を取って貰えるような文体にするのが、まずは先決だと思いました。内容はそれからだと思います。


この『街と不確かな壁』は、過去に幾度も繰り返されて来た高い壁を張り巡らされた街についての話しです。内容はひと言では言えませんが、71歳になっても、これだけの文学世界を構築することが出来る村上さんの体力、また様々な寓話を間に挟んで読者を飽きさせない旺盛な知識欲は、もの凄いと思いました。毎日ジョギングを続けているとのことですが、やはり一大長編を執筆するということは、体力勝負なんだなと納得させられました。


植物忌
植物忌
朝日新聞出版


もうひとつは、星野智幸さんの短編集『植物忌』です。


植物を題材にした、現実と幻の狭間で会話をするような話で、すべての話は独立しています。


星野智幸さんは前に読んだ『焔(ほのお)』という短編集から入りました。やはりこちらも、人間が動物になってしまったり、温暖化で人間が溶けて行ってしまうといった荒唐無稽な話が多かったのですが、それでもなんとなく世界に対する愛情のようなものが感じられ、人間に対しての希望は捨てていない、という著者のメッセージが感じ取れるように思いました。


またこの星野智幸さんという人は、動物や植物に関しての知識がとても豊富で、それが小説に活かされていると思います。だからそういうものが好きな人にとっては、すんなりと入って行けるんじゃないかと思います。


機会があれば手に取ってみては如何でしょう?

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