1984年 読了(ネタバレあり)
こんにちは。
ジョージ・オーウェル著:1984年、読了しました。内容は、架空の1984年に於いて、情報や思想を管理された統治社会で、それに疑問を抱いた主人公がその社会に反旗を翻そうとする、というものです。
以前から気になっていたので、古本を手に入れ、読み進んで行きました。
前半の、その統治社会が描かれる場面というのは、良かったです。1949年(この本が出された年)に、こんなにも未来の社会の歪みのようなものが描写されているというのは、素直に凄いと思いました。監視社会、情報改竄、密告など、これからこの社会が直面しそうな問題が、まざまざと描き出されています。
そのなかで、そんなようなものに支配されているのは、なにかおかしい、そう思った主人公が、反政府組織に接触し、その謎を解明しようとする場面まで描かれているのが前半とします。
後半は、なんとあっけなく、その主人公が政府の中枢に捕まってしまいます。そうして恋人と離れ離れになり、裏切られた人間に恐ろしく残酷な尋問を受けるというものです。
これは酷い、と思いました。そして前半の近未来チックな流れから、いきなり中世のような拷問シーンに変わります。
これは読者の期待をかなり裏切るものです。まあ主人公が無事でいられるだろうとは思っていませんが、党中枢になんらかの打撃を与えられるだろうと、そういう期待を(読者は)抱きながら読み進んで行くのですが、後半は汚物に塗れた拷問シーンが続き、げんなりします。
この変わり様、とても付いて行けません。物語としては破綻していると思います。
それでは何故この小説が欧米で評価されているのか。
欧米の映画やドラマなどを見ると、とても暗いものがあります。社会の底辺で生きる人たちの、救いようのない生き様。そんなようなものが求められている感じがあります。
その観点から見て行くと、こういう筋の小説も受け入れられるのだなと思いました。
ですが自分は、せめてそんななかでもなんらかの党中枢への反撃の狼煙が上がるような、その予兆が感じられるような展開が欲しかったです。
事実、この小説の巻末には、作者が書いたと思われる附録があり、この統治社会が崩壊し、その後の世界の誰かが書いたと思われる記述があります。つまりそんな社会だったら、さっさと主人公に崩壊させるべきだっただろうに、と思います。
この小説の評価は、前半の統治社会の実態を克明に描いた点にあると思います。後半は、スターリンやナチスの伝記を読むような感じで流し読みして下さい。あまり感情移入しないように。
以上、1984年の感想でした。