吉本隆明『真贋』
こんにちは。
学生の頃は、とにかく本を読むべきと言われていた気がします。
若い頃は吸収が早いので、一字一句が身に付くという理由もあったように思います。
また本には過去の教訓や、その人が経験して来た出来事などが書かれているので、それを追体験することが出来るという利点もあります。
言わば『転ばぬ先の杖』的な視点も担っているということです。
このように、本を読むということはいいことだと全般的に言われて来ました。
ですが、『本を読むという行為は利もあり毒もある』ということを謳った論者がいました。
吉本隆明です。
- 真贋 (講談社文庫)
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この本に於いて、著者は、
「僕は小説や詩を読むことで、心が何かしら豊かになるということを妄信的に信じている人がいたら、すこし危険だと思います」と語っています。
私もどちらかといえばそれを信じている一人でした。そしてそれから、本を読むということは一概にいいことというわけじゃないと再認識するようになりました。
例えば、私がここで述べている社会の裏のようなもの、そのようなものに感化されて、この世の中なんて下らない、という人間ばかりになってしまったら、この社会自体が成り立たなくなってしまいます。
私はこの社会で辛い目に逢って来たので、そのようなものを憎む気持ちが人一倍強く、それがこのような視点を生んだのですが、そう思っていない人たちは確かにいて、まだこの社会の未来を信じているかも知れない。そしてそのような人たちがこの社会を良くする可能性もあるわけです。みんなが斜に構えたようなものの見方しかしなくなったら、その可能性は閉ざされてしまうでしょう。
とはいえ、この社会には看過出来ない『悪』のようなものがあるのも事実です。それにみすみす嵌って不愉快な思いをすることもありません。私はそのようなものからなるべく身を避けられるような道筋を提示して行きたいと思います。