クマの被害
今年はとくにクマの被害が多く、毎日のようにニュースになっています。
私も春先に行った林道で、クッキリとしたクマの足跡があるのを見て、これは注意しないとな、と緊張したことがあります。
私の住んでいる静岡県東部地区は、自然林にナラが多く群生し、ドングリが沢山成ります。クマの冬眠に向けた主食ともいえるのがドングリなのです。
数年前まではドングリがパラパラと、そこにいるだけで落ちる音が聞こえて来ました。
ところが、4、5年前からナラ枯れ病という、ナラの木が枯死してしまう病気が多発するようになりました。
遠くから山を見ていても、まだら状に木が茶色くなっている箇所が散見されます。
この病気の原因は、カシナガキクイムシという虫が木のなかに入り込み、その活動のせいで通水が阻害され、枯死してしまうとのことです。
あんな大木が、僅か5㎜ほどの虫のせいで枯れてしまうとは、驚くばかりです。
しかしそれにより、大量のドングリを供給していたナラの大木が、激減してしまうことになりました。
そういえば、いままでは秋になると至る所にドングリが落ちていたのが、昨今まったく見ません。
ドングリなんて食えないし、別に構わない、なんて思っていたわけではないのですが、それがここ数年のクマの出没に関わっていたとすれば、これは見過ごせない出来事です。
クマだって、好き好んで人里まで降りて来るわけではないと思います。
人間に遭遇すれば、むしろ人間以上に危険な目に遭うということは、クマだって充分わかっていると思います。
それでも、飢えによる絶望感がそれを選択させるのです。
飢えによって狂気を帯びた野生のクマ、それが人と遭遇すれば、どんな事態となるか、想像に難くありません。
これも人間の活動によって引き起こされた現象だと思います。このカシナガキクイムシという虫の活動の拡大に、温暖化が影響しているのは間違いないと思います。
人間の活動が、人間を追い込むというだけでなく、周りの動物まで巻き込んで拡大していくということに、人間の愚かさ、罪深さというのを感じました。
そういえば、まだ在職中に、このナラ枯れについての危機感を語ったら、
「そんなもん、枯れたって、他の木が生えて来るから大丈夫だよ。自然ってのはそうやってバランスを取っているのさ」
とわかったようなことを言われました。まるでこちらの言っていることを嘲笑うかのように。
でも、それは自然がちゃんと機能していれば、の話しであって、木だってこれから育つまでに何年もの歳月を要するはずです。その間に、取り返しが付かないぐらい環境が損なわれてしまったら、もうバランスどころの話しではないですよね。
愚かな人間は、どこまでも愚かなんだな、と再確認しました。
クマの生育環境が壊滅的にならないことを祈るばかりです。