会社生活を駆け抜け(た)日々

55歳でひとまず会社生活に区切りを付けたその後の日々

三嶋大社で出逢った女の人

雨ですね。


雨が降ると、なんだか昔のことを思い出してしまうクセがあります。


自分の数少ない恋愛経験みたいなものを語ってみたいと思います。


私は自身の性格からか、どこか現世離れしたようなものを持つ人に惹かれてしまう性質があり、目付きの異様に鋭い人とか、ドラマチックな風貌の人を好んでしまう傾向があります。


まだ20代後半の頃、三嶋大社で催し物をやっていたことがあり、そこで出逢った女の人がまさにそうでした。


どうやらその一行は、全国の祭りや催事を回って出店を開いている、所謂『テキ屋』の集団みたいでした。昔はそういう人たちというのが結構いたように思います。


そこで店番をやっている一人の女の人に、目を奪われてしまいました。なんというか、普通の顔では無いのです。


言ってみれば、ジプシーのようなギラギラした顔付きでした。顔は黒く、そのなかの眼が異様に輝いているのです。


私の回りにはまずいない顔でした。そしてその眼は、この日本国で、まあ大体の人がなんとなく通る成長の過程を、すんなりとは通っていないということを物語っていました。幼少期にTVを見て、親の作ったスパゲッティやハンバーグを食べ、学校では友達と漫画の話をする、そんな杓子定規の生活では育っていないという感じです。


昔は日本にも、全国を放浪して民芸品や山のものを売って生計を立てる、ジプシー的な生活をしている人たちがいたと聞きます。そしてその方たちは、明治~昭和初期ぐらいになると、次第に類似した商売、テキ屋や巡業的な仕事に移って行ったのでしょう。全国各地のお祭りや、縁日を回って生計を立てる、近代的な手法を選択したんだと思います。


ですがそうなると、もう我々一般の人間と、さして変わらなくなってしまいます。次第にそういった方たちも、その特性のようなものは薄れて行き、屋台に行ってもそんな顔をしている人は少なくなりました。


ですがあの三嶋大社で出逢った女の人、あの人は紛れもなく古代からそういった生活をしてきた人たちの血を受け継いでいる、日本版ジプシーの生き残りだと思いました。一瞬にしてこちらの目を釘付けにさせる、そんな神秘的なオーラを纏っていました。


そのままあの人に付いて行っていれば、私の人生もまったく様変わりしていったに違いありません(そんな度胸は毛ほども持ち合わせていませんが)。

×

非ログインユーザーとして返信する